前立腺がんには予防方法はある?おすすめの食事・運動・サプリメントは?

前立腺がんには予防方法はある?おすすめの食事・運動・サプリメントは?

前立腺がんは生活の欧米化に伴って増加し、今や男性の最もかかりやすいがんの一つです。予防方法は、食生活を変え、運動習慣をつけることがその第一と言われています。

執筆:[薬剤師]齊藤 桂丞

● 経歴:慶応義塾大学薬学部卒業後、調剤薬局に薬剤師として勤め、研修認定薬剤師を習得。2022年よりぺブルコーポレーション株式会社に入社

● 自己紹介:健康や薬、ヘルスケアなどの情報をわかりやすくお伝えしていこうと思います。微力ながら、薬剤師としてみなさまの健康や生活へお力添えができればと思いますので、よろしくお願い致します。


こんにちは薬剤師の齊藤です。

今回のテーマは前立腺がんの予防方法について

・前立腺がんの罹患率と死亡率について
・前立腺がんの予防方法について
 

前半部分で前立腺がんとはどういったがんなのか、その特徴を

後半部分では前立腺がんの予防方法についてみていきたいと思います。

 

前立腺がんは30年で4倍にも増えているがん。現在は男性の中で罹患率1位!

前立腺がんは男性特有のがんで、男性ホルモンが関連しているがんです。

前立腺は男性にしかない器官ですので、女性は発症しません。

まず、日本でこの前立腺がんがどのくらいかかりやすいのか、どのような年齢層の方が発症しやすいのか、統計情報をもとに見ていきましょう。


前立腺がんの統計情報ななめ読み。

前立腺がんの罹患率 罹患数
(新たに診断されること)
1位 (2018年)
92,021人
どの年齢層がかかりやすいか? 70~90歳あたりがピーク
どの年齢からかかりやすくなるか? 50歳あたりから増え始める。
前立腺がんの死亡数 12,759人(2020年)
5年生存率 89.2%
前立腺がんの増加率
(年齢調整人口対比)
1995年約16人→2016年約60人 約4倍
前立腺がん死亡率の増加率 1995年約6人→2016年約8人


出典:Cancer Statistics. Cancer Information Service, National Cancer Center, Japan (National Cancer Registry, Ministry of Health, Labour and Welfare)
Long-term survival and conditional survival of cancer patients in Japan using population-based cancer registry data. Cancer Science 2014; 105: 1480-6より改変

 

前立腺がんは直近30年間で約4倍にも増えてきている現在では男性で最もかかりやすいがんとなりました。


年齢別で見ると、50歳あたりから徐々にかかる人口が増え始め、70歳あたりで最もピークとなります。50歳あたりからは注意が必要ですね。


前立腺がんの死亡率は低めですが、やはり予防できるのであれば予防していくに越したことはありません。


では、ここ数十年で増えてきている理由は何なのでしょうか?

 

前立腺がんが増えてきている理由は欧米化にある。

 
 出典:Updated trends in cancer in Japan: incidence in 1985-2015 and mortality in 1958-2018 - a sign of decrease in cancer incidence. Journal of Epidemiology 2021; 31: 426-450
Cancer Statistics. Cancer Information Service, National Cancer Center, Japan (Vital Statistics of Japan, Ministry of Health, Labour and Welfare)より改変

 

 

先ほどもお話した通り、前立腺がんは30年前を比較して、4倍ほどに増えてきています。

この背景には、我々の食事が欧米化し和食から洋食になったことがその原因の一つとして挙げられています。

前立腺がんは食事の欧米化に伴い、動物性の脂肪分やコレステロールの高い食事を継続的にし続けることで、発症しやすくなっていると考えられています。

男性ホルモンの材料であるコレステロールが多くなることで、男性ホルモンが多くつくられ、この男性ホルモンの影響で前立腺がんが起こりやすくなっているのではないかと考えられています。

反対に、野菜や魚、穀物を中心とした昔ながらの日本の食事は、前立腺がんに対し予防の効果があると言われています。

特に、みそ、しょうゆや豆腐などの原料である大豆には大豆イソフラボンが含まれており、

大豆イソフラボンは体内で代謝され、女性ホルモンと似た働きをするため、前立腺がんの予防としての効果に優れています。

前立腺がんの予防方法は、昔ながらの日本の食事と運動を!


まず、前立腺がんの予防方法ついて、これをすれば確実に予防できるというものはありません。

ただし、食事や運動など生活習慣を変えることで、そのリスクを減らすことはできると言われております。


食事や運動での予防は短期的にできるものではないため、かかりやすい年齢である50歳から始めるのではなく、40代、30代と早め早めのうちから実施することが大切です。

 

食事は脂質を避け、大豆製品、緑黄色野菜を多めに摂る。昔ながらの日本の食事が大切


前立腺がんを食事から予防するのであれば、イメージとしては日本の昔ながらの和食がおすすめです。

特に意識してもらいたいことは、バターやラード、お肉の脂身や鳥皮などの動物性の油をカットすることです。

脂がのっているひき肉やバラ肉、ホルモンなどよりも、赤身やささみ、胸肉などのたんぱく質多く含む部位がよいです。

そして積極的に摂ってほしい食材は下記にまとめます。

 栄養素・成分  食材 
女性ホルモンと似た働きを持つ大豆イソフラボン  納豆、豆腐、しょうゆ、みそなどの大豆製品 
コレステロールを下げる働きを持つリコピン  トマト 
ビタミンA  緑黄色野菜 
EPAやDHAなどのオメガ3系脂肪酸  青魚(イワシ・サバ) 
アスタキサンチン   

コレステロールを減らすためには、有酸素運動がおすすめ 

運動でLDLコレステロールを減らすのであれば、有酸素運動となります。

ある研究では有酸素運動をすることにより善玉コレステロールが増えることがわかり、

この運動効果を得るためには、週に2時間相当の有酸素運動が必要であるとわかっています。

 
運動の目安としては

 頻度 1週間に3~5日
1回あたり 30分~1時間程度
1週間の合計 150分~250分程度

有酸素運動は、ウォーキング、ジョギングなどが一般的です。

まずは歩く歩数を増やすところから始めてみましょう。

前立腺がんの予防に効くサプリメントはあるの?脂質を下げるサプリメントを!

残念ながら、現在日本では前立腺がんを予防できるとのサプリメントは販売されていません。

しかし、体内の脂質やコレステロールが多くなってきたことが前立腺がんの発症のリスクを上げているだとすると、脂質やコレステロールを減らしていくことが大切と考えます。

脂質やコレステロールを下げる働きを持つサプリメントや健康食品などを摂取するのがよいのではないでしょうか。


 
 コレステロールを下げる働きを持つ成分例
  • リコピン(トマト)
  • プロシアニジン
  • β-グルカン(大麦)
  • α-リノレン酸
  • セサミン(ゴマ)

上記の成分名を参考にサプリメントや健康食品を選んでみてください。

まとめ


・前立腺がんは現在では、男性では最もかかりやすいがんである。

・前立腺がんは食事や生活スタイルが欧米化したことによって増加しているともいわれている。

・前立腺がんの予防方法は大きく2つで、食事と運動を変えていくこと。

・食事は大豆や魚、野菜を中心とした和食へと変える。

・運動は有酸素運動をしましょう。まずは歩く歩数を増やすところから始めてください。


【おまけ】射精で前立腺がんは予防できるのか?


少し古い論文になりますが、2004年に射精と前立腺がんの関係についての論文が発表されました。

1か月に射精回数が7回以下と21回以上の中年期の男性群を比較すると、21回以上の男性群の方ではその後前立腺がんの発症リスクは30~50%程度少なくなると結果が示されています。

ただし、禁欲期間が長ければ前立腺がんのリスクが高くなるかについてはよくわかっておらず、また、この頻回の射精は現実的に難しいため、前立腺がんの予防は食事や運動に気を配る、改善することの方が重要と考えます。

 ■参考資料
・Cancer Statistics. Cancer Information Service, National Cancer Center, Japan (National Cancer Registry, Ministry of Health, Labour and Welfare)

 ・Monitoring of Cancer Incidence in Japan - Survival 2009-2011 Report (Center for Cancer Control and Information Services, National Cancer Center, 2020)
Population-based survival of cancer patients diagnosed between 1993 and 1999 in Japan: a chronological and international comparative study. Japanese Journal of Clinical Oncology 2011; 41: 40-51.

・前立腺癌―最新の診断から治療についてー
昭和学士会誌 第76巻 第2号(116-124,2016)

・Ejaculation Frequency and Subsequent Risk of Prostate Cancer Michael F. Leitzmann, MD JAMA. 2004;291(13):1578-1586.doi:10.1001/jama.291.13.1578

 

 

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